No.6【質問】ナノテクノロジーっていったい何?

2012/10/16 17:50 に www2 creator が投稿   [ 2013/01/22 21:18 に更新しました ]
● 科学なんでも相談室● No.6

【質問】
ナノテクノロジー、よく聞くようになった言葉なのですが,どのような技術なのかよくわかりません。身近な生活にどのように役立っているのでしょうか?今後,どのように発展するのでしょうか?

【答え】
 ナノテクノロジー とは、原子や分子がいくつか集まった集団の配列を制御して,そこに新しい機能を持たせようとする技術の総称です。その集団の大きさは数ナノメートルから数百ナノメートルなのでナノテクノロジーと呼ばれるのです。ちなみに,1ナノメートル(1 nm)は1x10-9 mで,大体髪の毛の太さのおよそ10万分の1になります。極微細なのだけど原子や分子よりちょっと大きいサイズの世界を扱う技術です。

 ナノテクノロジーは,①材料の大きさがナノスケールになった時に特別な性質が発現する材料を開発する「ナノ材料」という分野,②より小さいものから複雑な構造を持った材料や素子を原子や分子の集団が自動的に組み立てるボトムアップ的アプローチ,③より大きなものから従来の製品より精密かつ小さなデバイスを作ろうとするトップダウン的アプローチ(ナノ加工),④ナノサイズの材料やデバイスの特性を測定する「ナノ計測」など,様々な分野を含んでいます。

 ナノテクノロジーは、日々進化して応用分野も拡大し続け、情報通信、エレクトロニクスから、医療・健康、バイオ、環境・エネルギーまで、様々な重要課題解決の鍵技術となることが期待されています。特に,エネルギー的に効率のよい微細な世界での物質の働きを利用することで省エネルギーシステムができたり,必要最小限の分量で欲しい性質を出させたり,高効率の極限的分散処理が可能になることが期待されています。特に21世紀に入り、地球温暖化や生物多様性保持など環境・エネルギー問題、また、高齢化社会の中で必要とされる、医療分野の他、食品分野や化粧品分野での、技術革新に資する大きなポテンシャルを持っています。

 東京農工大学は,このナノテクノロジーの卓越的な研究拠点の候補として認定され多くの分野で研究が始まり,現在も工学部の主要な研究課題として精力的に展開されています。例えば,ナノ材料を利用した「ドラッグデリバリーシステム(薬剤を必要な部位だけに届ける技術)」についての研究は、有機材料化学科の村上研究室で行われています(http://www.tuat.ac.jp/~murakami/res2.html)。また、ナノ加工を利用した、「細胞培養(再生医療)のためのマイクロニードルアレイ」についての研究は有機材料化学科の渡辺研究室で行われています(http://www.tuat.ac.jp/~watanabe/Watanabe_Laboratory/xi_bao_zu_chang.html) 。

 ナノテクノロジーの具体的な製品への応用例としては経済産業省がまとめた資料もあり、参考になることと思います。http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g71004c03j.pdf