【質問】 高2の女子です。触角が切れてしまい短くなっていたヨーロッパイエコオロギの幼虫を飼っていたのですが、成虫になって、触角がまた長くなったように見えました。幼虫から成虫になるときには、触角は完全に新しくなるのですか?また、アリの触角は、途中を関節のように自由に曲げて使っていますが、コオロギのように、根元からしか動かせない触角と、役割などの違いや、進化の背景などあったら教えてください。よろしくお願いします。 【回答】 1.幼虫から成虫になるときには、脱皮する前にクチクラ(外骨格)の内側で、体のパーツが作り直され、古いパーツは脱ぎ棄てられ、新しく作られた触角が伸展するので、触角がまた長く伸びたように見えたのだと思います。幼虫から成虫になるとき、触角が新たにつくられたということになります。足もそうです。翅などは全く新しく原基(もとになる組織)からつくられることになります。
2.アリの触角ですが、アリ特有の形態の特徴として、触角には柄節というのがあります。それと、胸と腹の間に腹柄節というのもあります。 アリは進化の過程で、女王は交尾したら翅(はね)を落とし、地下にもぐり込み、卵を産んで働きアリの数を増やし、ご存知のように働きアリは翅をもたず、狭いトンネルの中で暮らすようになりました。巣仲間とコロニーをつくって生活していますが、触角の先で触れ合って仲間かどうか見分けたり(ありさんとありさんがごっつんこ、の歌でおなじみ)、化学的な刺激を受け取ったりするには、狭い中でもちょんちょんと触角の先を出したりひっこめたりするのに適している柄節がある触角が、他の昆虫のようなムチ上の触角(根元からしか動かせない触角)より合っているのだと思います。また狭いトンネルの中でくるりと方向転換したり、お尻の先から武器であるギ酸を前方に吹きかけるには、お腹を曲げやすいように、胸とお腹の間に節があった方が良いので、腹柄節も進化したのだと考えられます。まとめると、仲間と暮らす社会性昆虫であり、地下にトンネル状の巣をつくる生活様式にあったように、単独で生活していた遠い祖先のハチの仲間から分かれて、アリ特有の形態が進化したのだと思います。 上記のような昆虫の研究は、国立大学法人東京農工大学(今年で創基140周年を迎えました)農学部の応用生命科学科や生物生産学科、それとアリやミツバチなど社会性昆虫の研究は、所属は共同獣医学科ですが、動物行動学研究室、私の部屋で行っています。 以上文責は佐藤俊幸@動物行動学研究室でした。------------------------------------佐藤俊幸(准教授:理学博士)東京農工大学・農学研究院・動物行動学E-mail: tsatoh@cc.tuat.ac.jp,Tel:042-367-5629、Fax:-5628 |