No.24【質問】酵素の最適pH

2014/07/23 19:09 に www2 creator が投稿
【質問】

こんにちは。高2の女子です。

酵素の最適pHについて質問です。

私は、酸性やアルカリ性のほうが、過酷な環境というイメージを持っているので、ペプシンのように、逆に中性のときのほうが働かないというのが不思議に感じてしまいます。中性のとき、何が酵素の働きを阻害するのですか?

よろしくお願いします。

【回答】

 質問している方が高校生とのことですので、高校の化学・生物の知識はある程度あるという前提で回答させていただきます。

 まずお話ししたいことは、酵素は中性の人間の体温程度で働くのが普通というものではない、ということです。もちろん、人間の酵素は大多数がそのような酵素であると言えますが、自然界にはそうではない酵素はたくさんあります。例えば、遺伝子の検査に用いられるDNAの増幅法(PCR法と呼ばれる)は、100℃近くで働く(すなわち100℃近くが最適温度である)DNA増幅酵素を用いています。この酵素は、温泉の熱水噴出孔に生息している細菌から単離されたものです。自然界には、海底の熱水噴出孔など、人間が思いもつかないところに微生物が生息していることが知られており、そのような生物からとられた酵素には、最適温度が100℃以上というものも知られています。

 次に酵素には最適pHがどうしてあるのかということですが、確かに酵素は阻害剤によって阻害を受けますが、最適pHに関しては、酸性で働く酵素は中性では阻害剤で阻害されているからそうなるというものではありません。

 高校生でしたら、酵素はタンパク質の一種で、タンパク質はアミノ酸がペプチド結合でつながったものということはご存知かと思います。高校化学の教科書ではアミノ酸の性質としてpHが変化すると、陽イオン ⇌ 双生イオン ⇌ 陰イオン となることが書かれています。このように、アミノ酸はpHによってそのイオンの状態が変化します。

 酵素はアミノ酸がつながってできたものですから、酵素を構成するさまざまなアミノ酸の側鎖のイオンの状態は、同様にpHによって変わります。酵素による反応は化学反応の一種ですから、酵素による反応は、酵素を構成するさまざまなアミノ酸の側鎖のイオンの状態に影響されます。その結果、酵素全体として、pHの変化により 不活性型 ⇌ 活性型 ⇌ 不活性型 と変化し、最適pHが生じると考えられます。どんな最適pHになるかということは、最初に書いた通り酵素の働く環境によって大きく異なります。

 最後に一言、東京農工大学農学部応用生物科学科では、酵素反応がどうして起こるのか解析することにより、健康によい糖やバイオエタノールなど、食品や環境に有用な物質の生産を行うことを目指して研究を行っています。酵素に興味をお持ちでしたら、私たちと一緒に酵素を調べてみませんか。


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