【質問】 高校一年の女子です。 スーパーで買ったシイタケの中に、2個のシイタケがくっついているものがありました。 柄は2本ですが、根元でつながっていて、傘も、つながっていましたが、 真ん中あたりにくびれがありました。このシイタケはどうしてこうなったのですか。 また、どのようにしてできたのですか(いつつながったのですか)。
教えてください。よろしくお願いします。
【回答】
面白いことを観察され、興味を持ったことは素晴らしいことです、 これからもそういう目を持ち続けて下さい。
栽培されたシイタケで、ご質問のように二つのきのこでカサがついたりすることは 頻繁には起きませんが、極端に稀ではありません。シイタケは丸太で栽培するタイプと オガクズを詰めた袋で栽培するタイプがあります。このどちらでも見かける現象です。 商品としては微妙に違和感があり、欠陥と見なされ、出荷されないため、 一般の人の目に触れることは稀です。
先ず、シイタケに限らず栽培されるきのこは、種を植えて培養しますが、 この種は植物で言う種子とは異なり、菌糸を木片などで培養して 「種のように」作ったものです。植物では挿し木や組織培養に近いと考えて下さい。 動物で言えばiPS細胞から、特定の組織を作る段階のようなモノです。 (きのこ栽培では、出来上がるきのこの品質、発生時期など様々な点がバラバラになり 商品管理しにくいこともあって、種子に相当する胞子を使うことはありません。)
従って、1本の丸太から発生する子実体(きのこ)は、違う場所から発生しても 全く同じ遺伝子を持っています。クローンです。もし、これらから菌糸を取り出して ペトリ皿の上で培養すれば二つの菌糸体は融合し、一体化します。ですから、 同じクローンだと、くっつきやすいと考えて下さい。
しかし、子実体が或程度成長してしまうと、密着しても、きのこ同士は簡単には融合せず、 くっついて変形するだけで融合して一体化することはないようです。 これは組織の外側で外皮が形成され、分化してしまうと、融合が起きにくくなるためでしょう。 つまり、きのこの赤ちゃんの状態で微妙な距離だと今回のケースが起きるようです。
もう一つのケースがあります。一つの子実体に何らかの事情で縦割れが起きて、 その外圧がしばらく続くと、別々の子実体のように成長しますが、 カサの先はくっついたままなので、結果的に、質問されたきのこのように 二つがくっついた状態で大きくなります。
このシイタケと同じような現象は植物でも見られ、例えばガードレールや パイプを飲み込んだように成長した木などがニュースで取り上げられています。 人工的には可能で、近くに植えた二本の木を1-2mの高さで双方に傷をつけて 密着させて固定すると、二つを癒合させて成長させることができます。 接ぎ木の応用で融合する場合は親和性が高いと言います。この場合、傷を修復する細胞は 「根にも葉にもなる」分化の方向性のないもので(カルス細胞と呼びます。)、 しばらくすると、分化が決まり、①その環境が暗くて土壌化した腐朽材でもあれば根になるし、 ②明るい時は芽から枝葉になり、③幹の形成層と同じように育てば年輪形成をします。 ③のケースはくっついたシイタケと同じような状況です。
この現象そのものや食用きのこを直接実験材料に使っている教員は少ないですが、 広い意味での菌類は農学部では環境資源科学科や応用生物学科の一部などで扱っています。 植物の方は、獣医学科を除く全ての学科で扱っています。 この木では未だ飲まれていないフェンスが上にあり、下は幹に飲まれてしまっています。 途中の段階が編み模様の木肌になっています。この木も一度樹皮の組織がアングルや 金網という異物で別れさせられて、再び合体した状況を示しています。 農学部キャンパスには樹皮の一部が割れて、再び枝のよう繋がったバイパス樹皮を 持つヒノキが生協前にあります。オープンキャンパスで見学しみたらどうでしょう。 |