【質問】 高校2年生女子です。 私はマンゴアレルギーでアレルギーに興味があります。 小麦でアレルギーのない人がなぜ加水分解小麦入りの石鹸でアレルギーになったのですか。胃腸で消化された小麦と、人工の加水分解小麦は違うのですか?
【回答】 既にご存じだと思いますが、アレルギーは私たちの免疫系が異物に対して過剰に応答することによって起こる病気です。マンゴーも小麦も私たちから見れば異物ですから、それを排除するような免疫応答が起こること自体は異常なことではありません。過剰に反応してしまうことが問題なのです。 ただし、私たちの免疫系は食べ物に対しては他の異物と違ってそれを排除するような免疫応答が起きない仕組みを持っています。それを専門用語で経口免疫寛容と呼びます。食べ物は私たちが生きていくために必要で、自ら積極的に(大量に)体内に取り込んでいるものなので、それを排除するような応答は不必要であるばかりでなく、時には害ですらあるからです(その代表例が食品アレルギーです)。すなわち、食べ物に対するアレルギーは本来起こりにくいはずなのです。 では、加水分解小麦入りの石鹸についてはどうでしょう?石鹸は皮膚に塗りますよね?皮膚はばい菌等の危険な異物が最も侵入しやすい場所なので、皮膚に存在する免疫細胞はとても強力です。ですから、加水分解小麦を皮膚に塗ると口から食べたときとは比較にならないほど強い免疫応答が起こってしまいます。ただし、皮膚はバリア機能をもっているので、普通は塗ったくらいでは小麦タンパク質が中に入っていくことはほとんど無いのですが、加水分解したことで分子の大きさが小さくなって中に入っていき易くなっていたと考えられます。さらに、石鹸には皮膚の細胞と細胞の結合を弱める働きがあるので、皮膚のバリア機能も弱まって、なおさら皮膚からの取り込み量が増えたのではないかと思います。その結果、小麦に対して過剰な免疫応答が誘導されてしまい、小麦アレルギーになってしまったと考えられます。 以上が、加水分解小麦入りの石鹸でアレルギーになった理由ですが、現在まだ研究が進行している途中なので、石鹸の影響や小麦タンパク質分子の大きさの影響などわからないことも多いです。東京農工大学農学部の応用生物科学科では、食品アレルギーの発症メカニズムの解明に向けた研究を実施していて、このような疑問を解決することを目指した研究も行っています。
|